先述のとおり、歌手を目指す大半の方が、「歌を歌うのが好きだから」という志望動機を持っています。つまり、オーディションなどで志望動機を語る場合、「歌うことが好き」という大前提だけではなく、そこからさらに一歩踏み込んで、「どうして歌を歌うことが好きになったのか」について答えてみるのが良いかもしれません。
例えば、「一緒に暮らしている家族が元々音楽が好きで、物心がつく前から歌に触れる機会が多かった」といった理由や、「小学校の頃、学芸会などの機会に人前で歌ったときの感動が忘れられない」といったような具体的なエピソードがあると、あなたが歌手を志望する動機が相手にも伝わりやすくなるでしょう。

誰しも歌を好きになるきっかけには、必ずと言って良いほど、影響を受けた歌手がいることでしょう。つまり、そういった憧れの歌手と同じステージに立ってみたかったからというのも、歌手を目指す志望動機となりえるのです。もちろん、憧れている歌手のものまねをするのではなく、1人の歌手としてオリジナリティを出していくことが大切です。
そして歌手と一口に言っても、音楽のジャンルによってさまざまなタイプがあります。そのなかで、自分がどういった歌を歌いたいと思っているのか、音楽そのものに対する思いを志望動機として考えてみるのも良いでしょう。目指している音楽がロックなのかポップスなのかといったジャンルによっても、歌手としてのスタイルや個性（個声）の出し方は違ってきます。
芸能プロダクションが運営する歌手の養成所に入りたいと考えた場合、その憧れの歌手がいるプロダクションやレコード会社を選ぶことで、自分がやりたい音楽のスキルを磨いたりなりたい理想像に近づくためのヒントを得やすいかもしれません。

プロの歌手は、その歌声を用いて、聴いている人の心を揺さぶります。それは、歌を通してさまざまな感情が伝わっている証拠です。
歌手を目指している方の多くは、聴いている人たちに伝えたい思いがあることでしょう。つまり、自分が表現したいことを伝えるのに、どうして歌というツールを選んだのかについて考えてみると、それがそのまま歌手を目指す志望動機となるかもしれません。特に歌うだけではなく、作詞や作曲もすべて手がけるシンガーソングライターを目指している場合、どういった感情を世間にアピールしたいと思っているのかを伝えることで、目指す歌手の方向性や夢に対する強い気持ちも理解してもらいやすくなるでしょう。
もちろん、元々の歌唱力を活かして、もっと自分の才能を伸ばしたい、という気持ちで歌手を目指す方もいるでしょう。そういった場合には、歌唱力をキープするために、どういったトレーニングを行っているのかなども併せて伝えると、さらに印象が良くなるはずです。

現在、第一線で活躍している歌手のなかには、別の分野で芸能活動をしていたというケースも珍しくないようです。たとえば、女優やモデルといった経歴を持ちながら歌手になった方も多くいます。なぜ方向転換したのかと、不思議に思う方もいるかもしれませんが、表現するツールをお芝居から歌に変えたと考えてみてください。何かを表現するのが好きで芸能界に入ったという志望動機に変わりはありません。
特に最近では、声優から歌手へ転向するというケースが多く見られます。これは元々、声を仕事にしているから表現をしやすいという理由もあるからかもしれません。
また歌手のなかには、芸能界とは一切関係のない会社員といった一般の職業から転職をしたという方も多くなっています。これは「歌いたい」という長年の夢に再チャレンジした結果だと言えるでしょう。歌手はアイドルと違って年齢制限もなく、音楽的なセンスや歌唱力があれば、誰でもいくつになってもデビューを目指せる職業でもあります。
これらの例からも分かるように、歌手を目指す志望動機というのは、あくまでもきっかけであり、それほど重要ではなく、むしろ歌手を目指すと決めた後の努力とその過程こそが、何よりも大切にすべき部分でしょう。